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2007年 04月 17日
言葉と時間(ないし速度)
自分の言葉が,人の役に立つのだろうか.自分の言葉では,他人に何も伝えられないのではないか.自分を理解させることすら──時間をかけようがエネルギーをかけようが──失敗しているのではないか.……と思い悩んでいたこの半月間だった.必然的に,言葉を書くスピードは落ちるし,断片的なものばかりになるし,よってブログなんぞ書いていられなかった.この状態で学振申請書を書いて,匿名の誰かに向かって研究者としての自分を伝え,自分の研究が人の役に立つことをとくとくと説明しているのだから危ういものだ.この申請書,東京と大阪を巻き込んでの(僕にとっては)一大事業なのだが,それだけ風呂敷を広げた割に肝心の僕がこの状態なのだ.多少,申し訳ない.しかしその申し訳なさはちゃんとしたレポートを書くことでしか救えない.
人の話を聞くことはできる.普通のひとより我慢強いのだろうか,冷たいだけなのだろうか,聞き流しているのだろうか.人の愚痴を聞いても,悩みを聞いても,とくに苦痛は感じない.この半月間,そういう体験も比較的多かった.おそらく相手の状況にぴったり寄り添えてはいなくて,要約しながら聞いていて,要約の結果に対してやっと自分が反応できている状態.自分がぽつぽつと返す反応が,相手の役に立っているとよいが,そうでないと何をえらそうに口を挟んでいるのか,ということになりかねない.けれど,もともと学術的なコミュニケーションとはそのようなもので,相手がどういう感情にあろうと,自分が決して専門家ではない相手の話を適度に要約し,その結果得られたファクトを吟味しそれについて意見を返してあげるのだから(ああ,じゃあ冷たいのかな),ある意味慣れた作業かも知れない.しかし,適度に寄り添う以上のことはまだできない.相手の言動が展開される次元を俯瞰するには,何が必要なのだろうか.
4月の新年度になって思うのは,突然学期に向けての助走が始まっているこの時期に,人と交わす言葉の量が急激に増えて疲れるということだ.では学期の休み中は人と言葉を交わしていなかったのか,というと意外に実は,その通りかも知れない.旅行中もそれほど人と話しながら歩いているわけではなかったし(とくにプラハで,飲食店に入るたびになぜかフランス人と同席になり慣れないフランス語を話すことになったのは面白かったが),帰ってきたら塾で一方的に喋る(今年受け持っている生徒は,割と大人しいというか,時々心配になるくらい反応が薄いので,「うるさい」と思っていた去年の受け持ち生徒の活発さが懐かしくなったりもする)以外は,ヴァーチャルな言葉のやり取りが多かったように思われる.あ,あと音楽を聴く機会が多かったな(しかもホーメイとか).そういえば,毎週金曜日は8:20に本郷にいなくてはいけないという結構タフな日になった.タフというか,僕にとっては「地獄起き」(森博嗣)だ.金曜日のお勤めが終わるのが18:10だから,10時間マラソンか.──まずい,もう記述が断片的になりつつある.
明日は申請書の骨子を全項目に亘って定めるのが目標.ゼミに一個出席するかも知れないが,その後はちょっと大事な打ち合わせ.一日の終わりに向かって言葉の速度が上がっていく予定.スタートをゆっくりめに入って,確実にタイムを刻んで落とさないことが重要.

by d_ama | 2007-04-17 03:06 | miscellaneous

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