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2006年 12月 24日
『美学』投稿
雑誌『美学』への投稿が次号に掲載決定された,との通知をやっといただきました.
長かった…….一応スケジュールを書いておくと,11/20が〆切り,たしか12/20が編集委員会だとか聞いていて(この1ヶ月の間に何が進行していたのかは不明),20日付の文書を22日にいただいた.もちろん「長かった」のはこの日以来の1年を数えて,である.出るのは2007年3月末の予定だが,ここにも複雑なプロセスがあって,ページ数をはみ出したときには「次号送り」になるので,その場合は2007年6月末にずれこむ.形になってから祝いたい.
今となっては少し遠ざかってしまったが,もっとも応援してくれた人,修正付きながらアクセプトされた時点で特別に喜んでくれた人と,小田部先生にまず報告してお礼した.『美学』投稿という問題が,今年一年,自分のCPUの数%〜数十%をつねに食っていた.そのことは,その場でその都度起こる問題の把握やタスクへの集中を阻んでいたかも知れない.……いや,いろんなメタファが適用されうるし,その記述で示される事柄も今後の判断にはさほど有効ではないだろう.いずれにせよ,状況は変わったのだから.
自分の原稿に対するpositiveな(実定的な,といって通じるのか不明)オペレーションは,その都度自分の思念と実際の文章とのテンポとを明快にマッチさせる作業で,間の飛躍を埋めたり,枝葉にindulgeしている部分を省いたりしながら,ゴールへの一本線を描き込むもの.共同著者ではなく個人著者なので,この描き込みに必要な客観視を,個人の中で時間を置きながら行うしかない(こういうとき,多重人格がもしありうるならば,羨ましいと思う).
しかしこのオペレーションだけならば僕のCPUが「常時」割り当てられる必要はなかった.つねに引っかかっていた問題は,最後までアクセプトされなければ,自分の所属組織が歴史的に宿命づけられている「美学」という名前と自分との距離を再定義せねばならない点である.所属組織の名だけを根拠に,自分がその名前を分有して「美学」面していても,どこかで限界が来るだろうことを予想していたから.
建築,それも近代日本の建築を研究している人がいることが,私に美学研究室へ入るためのモチヴェーションを後押ししてくれた──といわれた.理論的な著作と向き合うことがこの研究室のプリンシプルであり(まあ,そのことはその通りだが),それ以外の研究はいわば「“応用”美学」で一段低く思われているのではと恐れていたらしい.その恐れは僕も共有しているが,そのことを考えながらも無視してのらりくらりと所属していられる鈍さが,ある意味で僕にプラスに働いていると言えよう.
もちろん『美学』に自分の名が載っていることをもって無批判に「美学」面するのにも(「美学」研究室の名簿に自分の名が載っているのと規模は違うが同形式の)限界があるのだが,少なくともその名が所属組織,大学の枠を超えたことに意味がある(その点,執筆者の所属大学や職名が載らないのは『美学』の見識だ).たぶん次はtrans学会,壁越えで,それができれば(ホームは「美学」会に置き続けるとしても)複数学会に跨がる自分の名を確保できよう.そのときが,研究者としての精神的な独立かも知れない.
もちろん制度上の,また生活上の独立はもっと別物だ.大学ないし研究機関の職を得るということが生活上ものすごく重要で,大学の職を持ったことで自分のある部分が充填される(30歳まで親がかりであることを許している両親と,そのことを可能にした状況には感謝している──といっても実家にはPCがないので彼らはこのブログをみていない).充填されない部分を見つめていて首をうなだれていても仕方ないのだが(国家は我々に当然行うべき最低限の投資をいやいやながらも行っているし,最低限を上回る投資を生まれ育った家庭が保証してくれているのだから,恵まれた環境に育ったことを何らかの形で社会に還元するには,先に進むしかないのだ),
やっと先に行ける.僕を駆り立てるエネルギーはまだどこかにあるはずだ.次のハードルも2月頭に迫ってきている.これはとりあえずは学会向けというよりは一般向けのものであり,研究者間の交流を深める効果と,自分の研究に対する社会のreputationの測定結果が得られるはずだ.チャレンジは,僕が初めて文章ではなく形態に言及する点.分離派が結成されるまでのことを扱ったタスクがもう終了したのだ.分離派もそろそろ形を作り始めるのである(当時の建築家としてもかなりの早さだと思うが,そこには博覧会,関東大震災などの要素も絡んでいる.もっとも今回取り上げる二人は博覧会も震災も関係なくて,官僚組織や大学に属したから仕事を回してもらえたのだが).

by d_ama | 2006-12-24 06:33 | books / studies

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