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2005年 11月 03日
国会図書館の謎
僕は人文系に身を置いている人間ですが,実は今日初めて,国会図書館に入って資料をいろいろ漁ってきました.それまでは京都大学工学部建築学科の図書室にかなりお世話になっていました.全国の大学図書館のうち目当ての資料が一番集積されているところが京大だったからなのですが,そのとき実は国会図書館に自分が入れないだろうとか,閲覧できても複写はできないだろうとか思い込んでいたのです(ここが一番恥ずかしいところですね).修士論文を書いている1年間には春と秋の2度も京都に行って,寺社にも茶屋にも入らず(美術館や喫茶店は入りましたが)資料を漁っていたのですが,今回は多少エマージェンシーだったのと,国会図書館でも複写が可能であるのを最近知ったのとで,いやいやながら(国会なんて言葉を聞くのも嫌ですし,ろくに勉強もしない国会議員に使用上の特権があるというのも嫌です)行ってきました.
でも,中は意外に面白い.基本的には全ての手続きが館内コンピュータシステムを介して行われていて,そのシステムに慣れるのに多少かかりました(この手のストレスって心理的には大きいのですが,時間的にはロスは10分くらいでしょうか).しかしこれは,注意書きにこそ一番大事な情報が載っているという役所文書の鉄則(運転免許取得時とか,国立大学受験・入学時とか,学術振興会への応募とか,いくつか学ぶ機会がありました.これからも学ぶ機会はたびたび来るでしょう)に自分を再び慣らすための時間だったと思います.普段から役所文書的な思考をしていたら,おおよそ創造性からはかけ離れてしまうでしょうけど(人文系の研究のどこに創造性が認められるか,なかなか一般に通じないのが問題です).各手続きに2-30分時間がかかるので,各手順の間に一々コーヒーブレイクが入る感じですが,コーヒーを飲んでいる限りは特に待たされていることでいらだつこともありません(レストランが1軒,喫茶が本館・新館に各1軒あります.レストランは大学食堂レベルのようです.喫茶は本館にある方が社員食堂風?,新館にある方が多少古びた近代美術館内の喫茶店風です).
新館は特にどうということもない建物ですが,本館の内部空間は,屋内なのに石畳風の舗装がされていたり色とりどりの彩釉タイルやガラスブロックが壁にあったりと,政治的に脱色されている気はしますがそれなりの面白さを感じ取れます.外観は香川県庁舎に代表されるような,日本の木造建築の構法を,鉄筋コンクリートで意匠的にまねたものです.ピロティがあたかも軒を張り出したかのような印象を与えていて,日本におけるピロティの受容について,いつか森田さんに聞いてみようと思いました.分離派建築会メンバーで元京大教授の故・森田慶一の論考という意味ですが.
最大の謎は,本館最上階,レストランの隣にある売店です.さぞや国会図書館とかの名前が印刷されたノートやらペンやら置いてあるんだろうなあ,と思いきや,まったく違いました.かなり古い型の背広(高級感もありませんでした)が飾ってある仕立て屋.クリーニング屋に一度シャツを預けたら,取りに来るためにまた手続きをして入館しなければならないのでは? さらにどう考えても女性が来ない感じの古ぼけた売店では,普通の文具や何かと一緒に,加藤あいやら山田優やらのポスターを貼り,化粧品を売っているのです.国会図書館内で誰が化粧品を買うのでしょう.東大には「コミュニケーションセンタ」という名前の土産物屋が赤門を入った左側にあって,なんと今年のGマークを取ってしまったのですが(実は,Gマークってかなり多くの製品が取っていて,希少価値はないのですけど),そこでは確かに泡盛とか売っています.大学構内には美容院や床屋や靴屋もありますし,生協にはわずかのCDも電化製品も家具も化粧品も売っていたように思います.一定数以上の職員を抱える職場には一定の店舗をつけなければいけない規則が国立施設にはあるのでしょうか.よりによって入場に制限のある図書館内でこのような店舗を誰が利用するのか,特に化粧品を買う人がいるのか,少しだけ興味があります.国会図書館で働いてらっしゃる方々(男女含む)に,特に奇異な印象は感じませんでしたが,売店だけが奇異な感じです.

by d_ama | 2005-11-03 02:05 | cities/architecture

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