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2007年 12月 24日
講義要綱とシラバス
結局今求められているのは,コースが始まるときに学生に配布する,講義計画や講師連絡先などを詳細に記したsyllabusではなく,どんなコースなのかを示す講義要綱であるはずだ.日本の大学は──ということは多分文部科学省は──前者を講義の始めのガイダンス書類とか何とか,名前を奪っておいて,後者をシラバスと呼ぶ.後者こそ大学本部がチェックできる書類,ということは文部科学省に提出できる書類であるからで,それを通じて,文部科学省が各講義をチェックできる体制であるということでもある.だったら,一般に公開しちゃってもいいし,そうした方が官僚の一元的支配を免れる力も社会に生まれるはずである.
ということで,今のところの案:
美学特殊講義ⅢB(後期,渋谷キャンパス月曜3限=12:40-14:10)
「建築学の歴史」

建築「学」という枠組みの歴史をたどります.建築物,建築家,建築技術などについては,必要に応じて解説していきますので,前もっての知識は必要としません.芸術ジャンルとして認知されにくい「建築」分野の成り立ちを人文学から考えることは,「芸術」概念のある境界を,制度とそれを裏付けていた理論を通じて検討することになります.日本国内での講義ですので,コース終了時に,西洋語の「architecture」と日本語の「建築」との比較,日本における「芸術」概念の特徴などにまで踏み込んで考察できることを当面の目標としますが,それ以外の目標を学生が個々に発見すれば積極的に認めます.
講義各回に提出してもらう質問カードに対する定量的評価(出席率のこと.2割)と定性的評価(質問の鋭さや質問に示された学生の認識・理解度.4割),またコース終了時に課すレポートに対する定性的評価(設定する問いの的確さ,それに対する答えの有効性,その過程での論理性を重視.4割)の合計が成績です.6割を超えたら合格.

教科書:
特になし.

参考文献:
言葉と建築──語彙体系としてのモダニズム,エイドリアン・フォーティー著,坂牛卓+邉見浩久監訳,鹿島出版会,2006年.
思想としての日本近代建築,八束はじめ著,岩波書店,2005年.
現代建築史,ケネス・フランプトン著,中村敏男訳,青土社,2003年.★
テクトニック・カルチャー──19-20世紀建築の構法の詩学,ケネス・フランプトン著,松畑強,山本想太郎訳,TOTO出版,2002年.★どっちにしようか?
「建築外」の思考──今和次郎論,黒石いずみ著,ドメス出版,2000年.
その他講義中で必要に応じ挙げます.

講義計画:
9/22 イントロダクション:建築は芸術か
9/29,10/6 古典古代とルネサンス(10/1履修登録〆切り)
10/20,27 ゴシック的なるもの(27日休講の可能性あり,その場合順次繰り下げ)
11/10,17 様式と西洋建築史
11/24,12/1 日本の建築(史)学受容(11/24は休日だが開講予定)
12/8,12/15 人文学と工学のあいだ
12/22(予備日1/19) 最終ディスカッション

by d_ama | 2007-12-24 12:14 | institutions

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