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2006年 12月 06日
口ひげ
口ひげ_e0017868_243714.jpg口ひげ_e0017868_2154827.jpgキリンビールのマークとなっている麒麟,本来口ひげがあるべき(想像上の)動物なのかどうかはよく解りません.Wikipediaの写真を見る限り,口ひげがあるにはあるけれど,ビールのラベルのような口ひげではない,という感じでしょうか.
なぜこんなことを書き出したかというと,キリンビールのHPには一切書かれていないのに,この麒麟ラベルの口ひげ(目と鼻が分かるとしたら,その鼻の左側につけられている部分です)がキリンビール(当時のジャパン・ブルワリー社)の中興の祖,グラバーの口ひげであると,まことしやかに語られているからです.特に長崎方面で言われているのは,ラベルの麒麟のモデルが長崎グラバー園にある狛犬像であり,それにさらにグラバーの口ひげが付けられたという説が,長崎の人々に歓迎されているからでしょう.再び登場の篠田真由美『建築探偵桜井京介 館をいく』(講談社)でもその説が紹介されています.繰り返しますが,そうした説はキリンビールのHPに書かれていませんし,その説を紹介する文脈においても根拠も特に示されてはいません.だからといってこの説が虚偽である,とも言えないのが「不在証明」の難しさではありますが.
今日は鈴木博之先生の大学院講義の最終回として組まれた,静嘉堂文庫見学会に参加してきました.コンドル設計の岩崎家墓廟の内部(撮影禁止です;墓ですからね)も見学できました.案内して下さった静嘉堂文庫の原氏は実は建築の教育を受けた方ではなく,重工の重役だったのをリタイアする形でこちらに移られて,なのに自分で資料を調べて今はなき岩崎家の深川邸の復元図面を自分で描くなど,熱意を持って三菱の生き証人を自認していらっしゃる雰囲気が窺えました(建築史学会の学会誌『建築史学』に投稿論文あり).その熱心さはもちろん初期三菱財閥の歴史を説明する語りにも反映されていました.執事ってこういうメンタリティなのかなあ,ちょっと違うかなあ,とカズオ・イシグロ『日の名残り』を読んだ記憶と照らし合わせながらお話を伺っていました.資料に直接当たること,そこから情報を読み取ること,その資料を揃えておくこと──建築史に不可欠な一側面で,僕がその任に相応しいかどうかは別として,その大切さを実感する一日でした.
グラバーも初期三菱を支えたメンバーです(キリンビール自体,今でも三菱グループのはずです).帰りにコンビニで「復刻ラガー」を見かけて,つい手が伸びてしまったのでした.

by d_ama | 2006-12-06 01:58 | cities/architecture

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