2006年 10月 03日
共著向けの論考で伊東忠太について書いているが,〆切りを過ぎているのにスランプに陥る.この文章は自分以外の人にとって面白いのか? この共著の企画にそぐうものだったか? 伊東忠太の面白さをわざわざ殺していないか?──むろん〆切り前に悩むべき事柄だ.元建築学科助教授の小説家・森博嗣が,〆切りを過ぎるなんて職業人のすることじゃない,とどこかに書いていて,その通りだ自分もそうしよう,と思っていたのにこの体たらく.仕事を選べない身分だから,とは解っているが(森は2ヶ月以内に〆切りを設定している仕事をすべて断っているらしい). メールが飛び込んできた.条件付きで『美学』採択,とのお知らせ.1500m走って,ゴールだと思ったら実は3000mSCだった,という感じ(水濠飛び越えなきゃ).論証というのはそういうことだったのか,と今更襟を正さざるを得ない.註をつけるかつけないかが大問題だった.つい自分が前提にしてしまっていることを,明記しないまま論文に埋め込んでいる.基礎的なことだろうが,自分では気付きにくいのではないだろうか? 学会ないし学界という共同体の存在意義. 大部な修論を一本の論文に収めるのは,修士論文の肉体労働に比べれば神経を張り詰める作業だ.構成をいじってメリハリをつけるべきだとは分かるが,字数とか論述上の順序とか複数の条件が重なる中を掻い潜らねばならない.〆切りは11月中旬まで.とりあえず後回し. かえって,伊東忠太は査読なしの共著なんだから,思い切って面白い読み物でいいのではないか,と開き直ってみる.いやしかし,ホンモノの美学者と,ホンモノの建築史学者との中間で,ホンモノの研究者である証明をどう立てるかは,一大課題だ.たぶん開き直るだけではなく,もう一ひねり必要.
by d_ama
| 2006-10-03 01:35
| books / studies
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