2006年 01月 11日
杉本博司 時間の終わり 17/09/05 - 07/01/06 森美術館 1月7日に行きました.よく考えたら,最終日だったのですね.杉本博司氏本人が会場にいるとは,気づきませんでした. 写真を撮る上でのコンセプトに重点を置いた作品群が多く,写真一枚一枚を念入りにみてもらうことは想定していないように思う. 例えば,関数で定義されうる特殊な形状の立体なり曲面なりを撮影した作品は,写真一枚一枚の差異はとりあえず捨象され,対象となる形状がタイトルとして,またイメージとしても前景化する.この構造はごく分かりやすいし,数学の知識さえあれば「ああ,**を撮ったのね」という了解に帰着しかねない(そんな数学の知識を持っている人がどれだけいるかは別として).一方,海面を撮った写真でも,数ある《海面》のなかでもフィルムに定着した像をもっとも左右しているであろう,撮ったときの気象や時刻や方角は捨象される.撮った海岸の名称や国名がタイトルになっているが,そのタイトルと写真を対照させて納得するという観賞法は推奨されていない.抽象的な《海面》という存在が各種条件によって異なる姿を示す,その差異が前面に出てくる.もしかしたら,数式で示される曲面の撮影も,曲面個々に付けられた名称よりも,《数式》一般のさまざまな様態が示されていたのかもしれない. 仏像の写真(三十三間堂?).無数に並ぶ仏像を念入りに一枚一枚に収めていくなかで,目を引いたのは,頭の後ろにある光輪?に付着した円盤が,写真一枚一枚に偶然の確率で反射し,きらめく.彼が一枚一枚の写真を高速化して見せたかったのは,その偶然の確率が,だんだん存在確率の雲のように見えてくることだったように思われる.
by d_ama
| 2006-01-11 00:19
| events / art
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