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2005年 11月 24日
横浜トリエンナーレ2005
やっと行ってきました.あまり人がいないというか,お祭り騒ぎにはなっていないのですが,簡単にいえばホテルの外壁にバッタが取りつくとか,桜木町からパシフィコへの動く歩道にイチカワヒロコのフレーズが並んでいたりというフォトジェニックなアイキャッチがないからです.それは決して欠点ではありません.今回唯一アイキャッチになりそうなのは,青い円すい形のコーンですが,工事現場によくある赤と白の縞でないという特異な点があったとしても,どれだけ巨大だとしても,地味です.むしろ赤と白の縦じまであれば,ダニエル・ビュレン(ビュラン)の旗がアプローチに大量に下がっているのですが,これも例えば大桟橋から見て圧倒的に目立つものではありません.場所自体,現に実際に倉庫として利用しており,普段は保税地区として,一般には入構すら許されていない場所です.大桟橋からベイブリッジを見るときに,ちょうど盲点になるような視角にある,平屋建て・三角屋根の倉庫2棟が会場です.目立たないところに,何か違うことが起きている,という気付きを誘発する仕組みは,川俣氏得意のものといえるでしょう.観光とも街おこしとも離れた場所にいます(理念的にも地理的=物理的にも).
作品そのものに関する評価の下しにくい作品ばかりが並んでいます.もしかしたら,評価という行為さえ無効にされているのかも知れません.経験すること,感知することだけが求められているのかも知れません.……と述べるのは,ある意味で,曲がりなりにも美学芸術学などという学科にいて研究者を目指している立場で,責任放棄でしょうか.もしあくまで客観的態度を貫きたいのであれば,作品を眺めるのではなく,作品に触れている観客の反応を眺めるべきでしょう.奇しくも,今日行ってみた限りでは,親子連れの割合が非常に高い.逆に,いかにもアート関係者という感じの人は少なかったです(関係者ならばとっくに一度以上見学を済ませているだろう,ということも言えますが).今回に限って言えば,会場に何度も通えること,つまり会場に近いこと(横浜市民であること?)が,受容の上でもっとも有利な条件です.
いつも川俣正の作品,プロジェクトを見ると起こる反応が,順調に今回も僕の中で起こっています.つまり……何も語れないのです.(笑)
出品作家について言うならば,アジアの中でも,東南アジアというよりは東アジア,特に中国の出展が目立ちます.中国の作家ばかりが集まったゾーンがありましたが,ここが非常に面白かったです.もはや誰がどれを作ったというのではない体験です.この言い方,単なる怠慢かも知れませんが.一人名を挙げるならば,照屋勇賢がもっとも印象的でした(鳥の歌が好きだから,かもしれませんが).
座ること,ゲームに興ずることが,体験の様態としては非常に目立っていました.特にゲームに興ずる作品がこれほど多かったのは,「アートサーカス」というテーマ設定ゆえでしょうか.そもそもそのテーマがどういう必然性で生じたのか,あまり明らかではないのですが.後は,飲食がもっと大々的に出ればいいなと思います(すでに有名なアーティストにもその手の人はいるわけで).

by d_ama | 2005-11-24 03:05 | events / art

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