人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2005年 11月 15日
日比谷三信ビル
日比谷三信ビル(1929,横河工務所/松井貫太郎設計)に,初めて入りました(外から見たことはあったけど……).内部空間がヒューマンスケールで設計されている,という印象でした.特に,建物全体は細長い矩形であるにもかかわらず,エレヴェータホールが半円形になっている点は,床面積・敷地面積あたりの利用効率を追求する考え方では出てこない特徴だと思います(エレヴェータが不等四辺形だったらこの発言を取り消さなきゃいけませんが,まあそれはないでしょう.エレヴェータには乗っていません).エレヴェータを待ちながら右に行ったり左に行ったりする心配がないわけで,それだけで人間本位だなと感じました.特に三信ビルの後に東京交通会館に入って,エレヴェータを待っていたときに,「下↓」ボタンを押すと,左右5,6台ずつ並んでいる内の一番右端と一番左端のエレヴェータの扉の上にある「下↓」印が同時に点灯したので,左右どちらで待てばいいのか迷ってしまいました.このときに,人間本位という感想が強まりました.また,1,2階ホールの天井を支えるアーチの曲線は,少し特異だな,という感じです.詳しくは判りませんが(単に勉強不足ゆえです.見る人が見れば,名前や特徴を言えるでしょう).また,東京交通会館屋上?のスカイラウンジはゆっくりと回転していることで有名ですが,今日から1週間ほど,改修工事に入るそうです.
さて三信ビルは,有名ですが,取り壊しが決定されています.どのような保存手段をとるかとらないかはまだ三井不動産も決めかねているようです.少なくとも,現状ですでにテナントの半数以上は立ち退いていて,例えば(1階に手洗い所がないので)2階に上がると,トイレ以外は全て空室です.ただ吹抜ホールの電気だけが点いています.
今日は五十嵐太郎氏のインタヴューをとるため,1階にある喫茶店に入って録音してきました.……実は,NPOのHPでその喫茶店の紹介をしようと思ったのですが(すでにここではしてしまっていますね),あまり目立つ形で紹介をしないでくれ,といわれたのです.いわく,すでに昔からいらしているお客様をもてなすだけで一杯一杯で,まして最近は取り壊しのために訪れている客が増えてあっぷあっぷなのに,これ以上客を増やしてサーヴィスを落とすことはしたくない,と.こんな心がけのお店,素敵ですね.粛々と,ぎりぎりまで,変わらず営業を続けるおつもりのようで,潔さのようなものを感じます.もしこちらの喫茶店に入るおつもりなら,空いている時間帯に,ひっそりと,あっさりと,コーヒー一杯飲んで帰るという,江戸っ子の蕎麦の食べ方みたいな訪れ方が,スマートかもしれません.少なくとも今日は,16時を過ぎた頃には,かなり空席が目立っていました(たぶん,そっちの方が常態なのでしょう).ケーキセットは僕らの分(14:40頃?)で売り切れました.それくらいの稼働率に振り回されまいと,商売を続けていらっしゃるのですね.

by d_ama | 2005-11-15 22:30 | cities/architecture

<< 本日,創刊.      幸せと,結婚と,生存と. >>