2005年 10月 06日
ザ・コーポレーション
ドキュメンタリー映画《ザ・コーポレーション》試写会
アップリンクからのメーリングリストにあった「先着20名様」にふと反応して,昨日応募してみたら,今日行くことになりました.場所はカナダ大使館の地下ホールです.カナダ大使館を訪れるのはもう3回目です.何度行っても,一度地上から2フロアくらいエスカレータで上がったら4Fだか3Fだかで,そこからB2にエレヴェータで下がるという表現が,身体の空間感覚と馴染みません.それとも,青山通りの反対側から見上げれば判るのかな(大使公邸らしきものがあって,容易に立ち入れなさそうですが).
【以下ネタばれ】映画の内容は,とくに北米を根拠とするグローヴァル企業を念頭に置いて,①法“人”格を得た企業は,南北戦争後のアフリカン・アメリカンの人権擁護のために予防的に作られた(=人間を対象と想定して制定された)法律を効果的に用いて,自らの権益を広げてきた②米国内であろうと発展途上国に建設した工場内であろうと,その行状をもし人間のものだとみなして一般化すれば,企業とは“サイコパス”である(環境への無配慮,未成年者を含む低賃金労働,自社製品の半強制的な売りつけ,広告産業を用いた洗脳,ファシズムや戦争などとの容易な結合,自社製品のイメージを損ねないための報道操作……具体例は全部覚えていないほど豊富です)③各種事業を民営化することは公共財の私有化であり,14,5世紀のエンクロージャーと本質的には同じである④企業にも,こうした企業の罪(道徳的なものであれ,法的なものであれ)に気付く経営者がいて,行動に具体的に結びつける者もわずかながらいる⑤世界銀行の強い要請によるボリヴィアでの水道事業民営化に人的犠牲を払いつつ反対し,水道を自らの許に取り戻した住民たちの例にみるように,企業とはいえその要素は人であり,企業に抵抗できる余地はあるし,そのように考え行動するべきだ……という風にまとめられます.【/ネタばれ】
重い,と一口に言われるような内容ですが,もちろんその内容は広く知られてきたことです(童話を勝手に映画に仕立て,その「著作権」利益を守るために法律を改定していくウォルト・ディズニーは,公共のものを勝手に私有化しているわけです.byイルコモンズ).それをかなり「かっこいい」映画に仕上げられたな,と思います.マイケル・ムーアのようなハチャメチャさはありません.全編を精神障害の発症→症例→癒しというメタファー(もっとも,製作者はメタファーと思っていないかも知れません.法的には,企業にも人権を認められてきたからです.マサチューセッツ州に限り企業を人格と認めないという規定を設けているそうですが)で覆ったからでしょうか,ストーリーとしても整えられています,ただこのメタファーが全編を覆っていることは,ある程度英単語を知らないと気付きにくいかも知れません.
映画の後の質疑応答が,ある意味で面白かったです.質問のほとんどが,この映画の伝えているメッセージ〈内容〉に集中していて,日本の状況はこうこうなんだとカナダ人女性監督(二人の監督の一方です)に教えてあげたり,カナダだからこそできる映画であると言ってみたり,アジア人や企業で発言力の低い民衆のことをあまり取り上げなかったように見えたのはなぜと問うてみたり,ナイキと仕事をするのにこれからどう付き合っていけばいいのか迷ってみたり,自分自身CEOなのだけどどうしましょうとか,これまた覚えきれない量の質問やコメントでした(本編150分,質疑応答は結局70分).
あまりにメッセージの〈形式〉の方に触れる質問がなかったので,僕もその大量の質問群の中に混じって,ドキュメンタリー映画にとってエンターテイメント性はどれだけ可能か,必要か,重要かということを尋ねてみました.でもその監督はカナダ太平洋沿岸の小島に住んでいて,社会的な内容の映画制作の合間に自然に触れて救われるということを言っていたので,それを都市の真ん中で見せられる僕たちはどうやって救われましょうね,と言ってみても,誰も笑ってくれないくらいみんな真面目なんです.冗談の言い方や質問の仕方も悪かったのでしょうけど,びっくりしました.社会的な問題を本当に純粋に考えたいなら,映画よりもすでに邦訳の出ている原作の書物を読めばいいのです.どれだけ笑いリラックスして見られるかとか,映像の力でどれだけメッセージを強められるかが,ドキュメンタリー映画のポイントだと思うのです(そのポイントを過剰に戦略的に強調しえたのがマイケル・ムーアといえるでしょう).もしかしたらみんな,本も映画も同じメディアだと等し並みに思っているのかも知れません.決してシリアスな雰囲気の映画なんて要らないというつもりはありません.けれどなぜこのメッセージを本ではなく映画で伝えようと思ったのか,そのことを聞きたかったのです(やっぱり質問の仕方が悪かったのでしょう,時間が迫る中で満足な答えは得られませんでした.お互い疲れていたのもあるかも知れません).ああ,やっぱり今日疲れていたんだな……いま眼が真っ赤なのに気付きました.
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by d_ama | 2005-10-06 00:35 | events / art

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